だれもいないフォルムに立つ
スベイトラに着いて最初に驚いたのは、人の少なさでした。エル・ジェムやカルタゴのにぎわいを思うと、ここはまるで別の国のようです。門をくぐると、石畳のフォルムに人影はほとんどなく、聞こえるのは風の音だけでした。
三つの神殿が、横に並ぶ
フォルムの奥に、三つの神殿が肩を並べて立っています。ふつうローマの町では、ユピテル・ユノー・ミネルウァの三神をひとつの神殿にまとめて祀ります。ところがここでは、三神それぞれに独立した神殿が建てられました。横一列に並ぶ三棟の眺めは、写真で見ていた以上に端正でした。
入口に立つアントニヌス帝の門(西暦139年ごろ)をくぐり、正面から三神殿と向き合う。この一連の視線の運びが、明らかに設計されていることが、立ってみてよく分かりました。門、広場、そして三つの神殿へと、視線が段階的に導かれていきます。
柱の影だけが、ゆっくりと動いていく。三神殿を独り占めするような時間でした。
スフェトゥラという名の町
「スベイトラ」は現在の町の名で、ローマ時代にはスフェトゥラと呼ばれていました。オリーブ油の生産で栄えた地方都市で、フォルムのまわりには、かつて商店や公共の建物が並んでいたはずです。今は基礎だけが残り、当時のにぎわいを想像で補いながら歩くことになります。
ローマのあとの時代まで
スベイトラに残るのは、ローマだけではありません。町のあちこちに初期キリスト教のバシリカが建ち、ウィタリスの洗礼堂には、モザイクで飾られた洗礼盤が残っていました。四角ではなく花びらのような形の洗礼盤で、色のついた小石が、いまも足元で静かに輝いています。
そして西暦647年、この町でビザンツの総督グレゴリウスが皇帝を名乗り、アラブ・ムスリム軍との最初の大きな戦いに敗れました。北アフリカの歴史が大きく塗り替わる、その分岐点の舞台でもあったのです。そう知ると、静かな平原の見え方が少し変わりました。
人の少なさという贅沢
有名なローマ遺跡は、どこも人であふれがちです。けれどスベイトラでは、三神殿の正面に立っても、シャッターを待つ列はありません。人の少なさは不便ではなく、むしろこの遺跡の最大の贅沢だと感じました。石の質感や、柱のあいだを抜ける風まで、ゆっくり味わえます。静かにチュニジア観光を楽しみたい方には、とりわけおすすめの一か所です。
歩くための備え
遺跡は平原に広がり、日陰はほとんどありません。夏の日中は日差しが強く、帽子と水は欠かせません。見学の所要時間は、フォルムと三神殿、バシリカをゆっくり回って約2時間。歩きやすい靴で来れば、隅々まで無理なく歩けます。
この先へ
三神殿の静けさを味わったら、次はエル・ジェムの円形闘技場、丘の町ドゥッガ、海の都カルタゴへ。性格の異なるローマ遺跡をつなぐと、チュニジアのローマ時代が立体的に見えてきます。
よくある質問
スベイトラの見どころは何ですか?
横一列に並ぶ三つの神殿、入口のアントニヌス帝の門、そして初期キリスト教のバシリカと洗礼堂が見どころです。スベイトラの見どころもご覧ください。
なぜ神殿が三つ並んでいるのですか?
ふつうは三主神をひとつの神殿にまとめて祀りますが、スベイトラでは三神それぞれに独立した神殿を建てた珍しい形式です。
見学の所要時間はどのくらいですか?
フォルムと三神殿、バシリカを回って約2時間が目安です。人が少なく、静かに見学できます。
服装や持ち物は?
日陰が少ない平原の遺跡です。帽子・日焼け止め・飲み水と、歩きやすい靴を持ち物に加えましょう。
他のローマ遺跡と組み合わせられますか?
はい。エル・ジェムやカルタゴ、ドゥッガと組み合わせると、チュニジアのローマ時代を立体的にたどれます。旅の準備はチュニジア旅行の完全ガイドもどうぞ。





